白い煙
2025年4月21日にフランシスコ教皇が亡くなり、5月7日からシスティーナ礼拝堂で後継者を選ぶ会議「コンクラーベ」が始まりました。翌8日の夕方、煙突から白い煙。選ばれたのは、シカゴ生まれのロバート・プレヴォスト枢機卿、69歳。史上初のアメリカ人教皇で、名前はレオ14世です。
教皇レオ14世(2025年5月12日撮影)。Wikimedia Commons / Edgar Beltrán, The Pillar / CC BY-SA 4.0
このブログで教皇の交代を扱う理由は一つ。「マラキの予言」です。
マラキの予言とは

12世紀のアイルランドの大司教、聖マラキが幻視で見たとされる、歴代教皇112人を短いラテン語の標語で予言したリストです。1595年に初めて印刷され、1143年の教皇から始まって、最後の112番目「ペトルス・ロマヌス(ローマ人ペトロ)」で終わります。
そしてリストの結びはこうです。「ローマ人ペトロが羊を養う。多くの苦難の中で。それが終わると七つの丘の町は滅び、恐るべき審判者が民を裁く」。
つまり、112番目の教皇の時代に世界が終わる、と読めます。
数え方の問題
前任のフランシスコが、この数え方では112番目でした。だから2013年の就任時から「最後の教皇」「フランシスコの次はない」と言われてきました。フランシスコは「ペトロ」でも「ローマ人」でもなかったのですが、「ペトロ」は初代教皇の名前なので「教皇そのものを指す」という解釈で乗り切っていました。
そして113番目が選ばれてしまった。予言の側は、どう対応したか。
- リストは「最後の教皇の前」で終わっており、ペトルス・ロマヌスは別枠。111番目のベネディクト16世までが予言で、その後は数に入らない、という読み
- フランシスコとレオの間に「隠れた教皇」はいない。だから予言は外れた、という素直な読み
- レオ14世こそがペトルス・ロマヌス。プレヴォスト氏はローマの教皇庁で長く働き、「ローマ人」と言える。「ペトロ」はどの教皇にも当てはまる
3番目の読みが、今いちばん勢いがあります。「世界が終わるのはこれから」の方が、都市伝説としては都合が良いからです。
「レオ」という名前
新教皇は、名前の理由を枢機卿たちへの演説で説明しています。19世紀末のレオ13世が、産業革命の時代に労働者の権利を説いた回勅「レールム・ノヴァルム」を出したことにならい、人工知能という新しい産業革命に教会として向き合う、という趣旨です。
ここに、このブログ向きの話が二つ重なります。
レオ13世の幻視。1884年、レオ13世はミサの後に倒れ、「悪魔が神に『教会を破壊するために100年の時間と力をくれ』と求め、神がそれを許す」幻を見た、と伝えられています。彼はその後、悪魔と戦う大天使ミカエルへの祈りを作り、ミサの後に唱えるよう命じました。「100年」が1884年から数えても、20世紀のどこから数えても、既に過ぎているのはご愛嬌です。
人工知能。新教皇が就任の最初の演説で名指しした課題が AI だった。このブログでは AI が「意識を持った」と主張した技術者の話や、脳にチップを入れる話を書いてきましたが、教会が AI を「労働者の権利」の時代と同じ規模の課題と位置づけたのは、記録しておく価値があります。
アメリカ人教皇という事実
これまで「アメリカ人は教皇にならない」というのが通説でした。世界最大の軍事・経済大国の出身者が教会の頂点に立つのは、バランスが悪いからです。今回それが破られたことで、「アメリカが教会を手中にした」「新世界秩序の完成」という話が早速出ています。
一方で、プレヴォスト氏はペルーで20年宣教し、ペルー国籍も持っています。「アメリカ人教皇」というより「南米で育った教皇」と見る方が実態に近い、という指摘もあります。
おわりに
「最後の教皇」の次が選ばれた。予言が外れたのか、ここからが本番なのか。マラキの予言は、外れても解釈が追加されて生き延びる種類の予言で、今回もそうなりそうです。
レオ13世の「100年」と、レオ14世の「AI」。名前が結んだ二つの話が、これからどう語られるかを追っていきます。









