同じ話を何度も見ていないか
SNS を眺めていて、こんな感覚になったことはないでしょうか。
データセンターのサーバー群。bot はこうした機械の上で動いている。Wikimedia Commons / BalticServers.com / CC BY-SA 3.0
- 同じ画像、同じ文章が、少しずつ違うアカウントから何度も流れてくる
- 話題になっている投稿のリプライが、どれも似たような一言ばかり
- 知らないアカウントなのに、なぜかフォロワーが数万いる
「あれ、これ本当に人間が書いてるのか?」という違和感を、まるごと一つの説にしたのがデッド・インターネット理論です。
説の中身
元になったのは、2021年の初めに海外の匿名掲示板に投稿された長文です。要約するとこうなります。
- インターネットは 2016年か2017年ごろに「死んだ」
- 今ネットに流れているコンテンツの大半は、人間ではなく bot と自動生成が作っている
- 目的は、人々を特定の方向に誘導し、消費させ、本物の人間同士のやり取りを薄めること
- それを仕組んでいるのは政府と大企業である
今年の夏に米国のメディア「アトランティック」がこの説を取り上げ、「陰謀論だが、妙に実感と合う」という論調で紹介したことで、日本にも広まりました。
数字で見える範囲
全部が陰謀だとは思いませんが、「bot が多い」という部分は数字で裏付けがあります。
- セキュリティ企業が毎年出しているレポートでは、ウェブのトラフィックのうち bot が 4 割前後を占める年が続いています(検索エンジンのクローラーのような「良い bot」と、スパムや不正アクセスの「悪い bot」の合計)
- Twitter は 2018 年に、数千万件の疑わしいアカウントを凍結したと公表しています
- 商品レビューやニュースの要約記事を自動で書くツールは、すでに普通に売られています
つまり「ネットの半分近くは人間の閲覧ではない」は本当で、「その多くは自動化されたもの」も本当です。説が飛躍するのは「誰かが意図して人間を減らしている」の部分です。
このブログ的な見方
このブログでは人工知能の話を何度か書いてきました。「Siri を超える AI」の記事や、2045 年のシンギュラリティの記事です。
デッド・インターネット理論は、その裏返しのようなところがあります。「AI が人間を超える」のではなく、「人間が減って、AI の書いた文章を人間が読んでいるだけになる」。派手な支配ではなく、静かな置き換えです。
イルミナティカードにも「Eliza」というカードがあります。人間のふりをして相手をするコンピュータのカードで、1960年代の対話プログラムが元ネタです。60年前の冗談が、今の掲示板の不安とつながっているのは面白いところです。
見分け方はあるのか
完全ではありませんが、目安はあります。
- プロフィールが薄く、投稿の間隔が機械的に一定
- 話題に関係なく、同じ短い賛同のリプライを大量に付けている
- フォロー数とフォロワー数のバランスが不自然
- 投稿の文章が、どこかで見た文章の言い換えになっている
ただ、文章を書く AI はここ数年で急に上手くなっています。「文章が下手だから bot」という判別は、そう長く使えないかもしれません。
おわりに
「ネットの大半は人間ではない」は、割合の話としてはすでに現実です。そこに「誰かが仕組んでいる」を足すと陰謀論になり、足さなければ技術の話になる。境目はそれだけです。
自分がいま読んでいるこの文章が人間の書いたものかどうか。それを気にし始めた時点で、この説はもう半分成功しているのかもしれません。








