「中の人」が語り始めた
2022年10月にイーロン・マスク氏が Twitter を買収してから、会社は毎日のようにニュースになっていました。大量解雇、認証バッジの有料化、復活する凍結アカウント。
サンフランシスコの Twitter 本社(2011年撮影)。Wikimedia Commons / Wgreaves / CC BY-SA 3.0
そして12月2日、マスク氏は社内の文書をジャーナリストに渡し、Twitter 上で連続投稿の形で公開させました。これが**「Twitter Files」**です。「大手 SNS の裏側で、誰が何を決めていたか」を当事者の記録で見せる試みで、このブログが2年前に Parler の記事で書いた話の続きでもあります。
公開されたもの
第1弾から数回分で示されたのは、大きく3つです。

- 2020年10月のハンター・バイデン報道:大統領選の直前、ニューヨーク・ポストが報じた記事のリンクを Twitter が「ハッキングされた資料」の規定でブロックした。その判断の社内チャットが公開され、社内でも「根拠が弱い」という声があったことが分かった
- 「可視性フィルタリング」:特定のアカウントを凍結はしないが、検索やトレンドに出にくくする、おすすめに載せないといった措置のリスト。会社はこれまで「シャドウバンはしていない」と説明していた
- 2021年1月の前大統領の凍結:議事堂襲撃の後にアカウントを永久凍結した判断が、規定に照らしてどう決まったかの経緯
いずれも「Twitter が特定の政治的な方向に肩入れしていた」と読める材料で、公開したのはその方向を批判している側のジャーナリストたちでした。
どこまでが事実で、どこからが解釈か
このブログの立場から、分けて考えます。
事実として新しかったこと
- 「目立たなくする」措置が実際にあり、対象のリストが存在した
- 社内の判断は一枚岩ではなく、迷いながら決めていた
- 政府機関からの削除依頼や連絡が日常的にあった
解釈が入っていること
- 「政府と SNS が結託して世論を操作した」という結論。公開された文書は依頼の存在は示しているが、Twitter が全て従ったわけではないことも同じ文書に出てくる
- 「マスク氏が全て明かした」という見方。文書を選び、渡す相手を選んだのはマスク氏本人で、公開そのものが一つの編集である
つまり、Twitter Files は「陰謀の証拠」でも「何もなかった証明」でもなく、巨大な企業の中で人間が場当たり的に決めていた記録でした。だからこそ、どちらの側からも都合よく引用されています。
「大衆操作ツール」という見方
このブログでは以前、Facebook を「大衆操作ツール」とする都市伝説をまとめました。SNS が人の考えを誘導しているという話は、陰謀論の定番です。
Twitter Files が面白いのは、「操作は存在した」と「操作は思ったより雑だった」が同時に出てきたところです。全知全能の組織が裏で糸を引くというより、寝不足の担当者が Slack で「これどうする?」と相談している。陰謀論が想像する世界より、ずっと人間くさい光景でした。
おわりに
「言論の自由」を掲げる新しいオーナーが、自分に都合のいい記録を選んで公開する。それを「公開された」と喜ぶ側と「編集された」と警戒する側に分かれる。SNS の裏側を見せる試みが、SNS の分断をそのまま映す結果になったのは皮肉です。
続きは今も投稿されています。全部を読む必要はありませんが、「誰が、何を、なぜ今出したのか」だけは頭に置いて読むのがよさそうです。










